森 鴎外
1862年2月17日(文久2年1月19日)-1922年(大正11年)7月9日
本名 林太郎。
明治・大正期の小説家、評論家、翻訳家、医学者、軍医、官僚。 第二次世界大戦以降、夏目漱石と並ぶ文豪と称されている。
石見国津和野(現・島根県津和野町)出身。
明治14年東大医学部を最年少で卒業後、陸軍に入隊。明治17年〜明治21年、衛生学研究のためドイツ留学。留学中の体験は後に「舞姫」「うたかたの記」「文づかひ」のドイツ三部作といわれる作品になった。
帰国後、作品を発表するかたわら文芸雑誌「しがらみ草紙」を創刊して文筆活動に入る。軍医総監となった後は、一時期創作活動から遠ざかったが、「スバル」創刊後に「ヰタ・セクスアリス」「雁」などを執筆。なお、帝室博物館(現在の東京国立博物館、奈良国立博物館、京都国立博物館)総長や帝国美術院(現日本芸術院)初代院長なども歴任。大正11年に萎縮腎・結核のため、千駄木の観潮楼にて死去。
ペンネームの由来 鴎外は30以上のペンネームを使ったが、最後まで使ったのが「鴎外」だった。「鴎外」の由来には諸説あり、千住にある「かもめの渡し」という地名をもじったものという説が有力。「かもめの渡し」は吾妻橋の上流にあり、吉原を指す名称でもあった。遊興の地には近寄らず、遠く離れて千住に在るという意味も込められている。また、「鴎」の字は「區+鳥」が正しいとされているが、パソコンでは機種依存文字となっているため、ここでは「鴎外」の表記を使っている。
本名 林太郎。
明治・大正期の小説家、評論家、翻訳家、医学者、軍医、官僚。 第二次世界大戦以降、夏目漱石と並ぶ文豪と称されている。
石見国津和野(現・島根県津和野町)出身。
明治14年東大医学部を最年少で卒業後、陸軍に入隊。明治17年〜明治21年、衛生学研究のためドイツ留学。留学中の体験は後に「舞姫」「うたかたの記」「文づかひ」のドイツ三部作といわれる作品になった。
帰国後、作品を発表するかたわら文芸雑誌「しがらみ草紙」を創刊して文筆活動に入る。軍医総監となった後は、一時期創作活動から遠ざかったが、「スバル」創刊後に「ヰタ・セクスアリス」「雁」などを執筆。なお、帝室博物館(現在の東京国立博物館、奈良国立博物館、京都国立博物館)総長や帝国美術院(現日本芸術院)初代院長なども歴任。大正11年に萎縮腎・結核のため、千駄木の観潮楼にて死去。
ペンネームの由来 鴎外は30以上のペンネームを使ったが、最後まで使ったのが「鴎外」だった。「鴎外」の由来には諸説あり、千住にある「かもめの渡し」という地名をもじったものという説が有力。「かもめの渡し」は吾妻橋の上流にあり、吉原を指す名称でもあった。遊興の地には近寄らず、遠く離れて千住に在るという意味も込められている。また、「鴎」の字は「區+鳥」が正しいとされているが、パソコンでは機種依存文字となっているため、ここでは「鴎外」の表記を使っている。
森 鴎外の代表作
『舞姫』 | (明治23年) | 『ファウスト』(翻訳) | (明治45年) | |
『即興詩人』(翻訳) | (明治25年) | 『阿部一族』 | (大正2年) | |
『ヰタ・セクスアリス』 | (明治42年) | 『山椒太夫』 | (大正4年) | |
『雁』 | (明治44年) | 『高瀬舟』 | (大正5年) |
森 鴎外と文京区
明治13年東大医学部の寄宿舎を出て湯島4丁目に下宿。卒業後陸軍省に入り、22年にドイツ留学から帰朝。23年千駄木町57に居住し、後にこの家には夏目漱石が入り、「猫の家」として親しまれる。25年に団子坂上の千駄木1丁目に移り、25年医院を廃業した父母と同居するため二階を建増し、「観潮楼」と名づける。ここが鴎外の文学活動の中心であり、生涯を送った。観潮楼は焼失したが、現在は区立本郷図書館鴎外記念室となっている。
森 鴎外の作品に見られる文京区
観潮楼 (千駄木)
鴎外は明治25年(1892)から30年間、亡くなるまでここに住み、数々の名作を著しました。明治40年からは観潮楼歌会も催され、佐々木信綱、与謝野鉄幹、伊藤左千夫、石川啄木なども参加しました。観潮楼は昭和12年の火災と昭和20年の戦災により焼けましたが、旧表門の礎石、敷石や庭園内の老銀杏、幸田露伴、斎藤緑雨ゆかりの三人冗語の石などに当時の面影が偲ばれます。現在は区立本郷図書館鴎外記念室となり、ゆかりの品々を展示しています。
詩碑
本郷図書館鴎外記念室(千駄木)
鴎外記念室の庭に面した壁に、永井荷風の書による森鴎外の詩『沙羅の木』の碑があります。
「沙羅の木」
褐色[かちいろ]の根府川石に
白き花はたと落ちたり
ありとしも葉がくれに
見えざりしさらの木の花。
森林太郎先生 詩
昭和廿[にじゅう]三年六月
永井荷風 書
父鴎外森林太郎三十三回忌にあたり弟妹と計りて供養のためこの碑を建つ
昭和三十九年七月九日 嗣 於菟[おと]
団子坂 (千駄木)
鴎外が30年も住んでいた観潮楼は、団子坂の上に建っていました。当時は2階の書斎から東京湾が遥かに見えたので、観潮楼と名づけたと言われています。
藪下の道(千駄木)
観潮楼は団子坂を登り切る途中を左に曲がった藪下の道の方が表門だったようです。今でも藪下の道に入口の跡があります。鴎外はこの道をよく散歩していたとのことで、作品の中にも出てきます。
「藪下の道を歩きながらの対話です。女が、いう。「……でも、又あなたの処へ寄ったのは秘密よ」男が、いう。「あなたはこんな事をいつまでも継続しようと思っているのですか」 女は、とまどう。「そうならそうで好くってよ」 こういう会話体は、教育のある令嬢ふうである。さらに男は、いう。「……あなたが僕の傍に来て、いくら堅くしていたって、僕の目はあなたの体のどんな線をだって見ます。そしてあなたはそれを防ぐことが出来ないのです」 女、「随分だわね」と、下を向く。・・・「一体あなたのいつも言っている清い交際というものですね」 『団子坂』(明治42年)
無縁坂 (湯島)
無縁坂は明治23年頃、鴎外の通勤途中にあり、それが縁で「雁」の舞台にしたと言われています。「雁」の中のヒロインお玉が想いを寄せる岡田青年の散歩道として書かれ、多くの人に知られるようになりました。
「寂しい無縁坂を下って、藍染川のお歯黒のような水が流れこむ不忍の池の北側を廻りこみ、上野の山をぶらつく」 『雁』
根津神社 (根津)
観潮楼のあった藪下の道の片側が、根津神社の裏門になります。
「小泉純一は芝日蔭町の宿屋を出て、東京方眼図を片手に人にうるさく問うて、新橋停留場から上野行の電車に乗った。目まぐろしい須田町の乗換も無事に済んだ。さて本郷三丁目で電車を降りて、追分から高等学校に附いて右に曲がって、根津権現の表坂上にある袖浦館という下宿屋の前に到着したのは、十月二十何日かの午前八時であった」 『青年』
(←)根津神社の境内には、明治39年に鴎外が寄進した戦利砲弾があり、
今では水飲み場として使われていますが、裏に森林太郎の文字が刻まれているのははっきりと読み取れます。
鴎外は明治25年(1892)から30年間、亡くなるまでここに住み、数々の名作を著しました。明治40年からは観潮楼歌会も催され、佐々木信綱、与謝野鉄幹、伊藤左千夫、石川啄木なども参加しました。観潮楼は昭和12年の火災と昭和20年の戦災により焼けましたが、旧表門の礎石、敷石や庭園内の老銀杏、幸田露伴、斎藤緑雨ゆかりの三人冗語の石などに当時の面影が偲ばれます。現在は区立本郷図書館鴎外記念室となり、ゆかりの品々を展示しています。
詩碑
本郷図書館鴎外記念室(千駄木)
鴎外記念室の庭に面した壁に、永井荷風の書による森鴎外の詩『沙羅の木』の碑があります。
「沙羅の木」
褐色[かちいろ]の根府川石に
白き花はたと落ちたり
ありとしも葉がくれに
見えざりしさらの木の花。
森林太郎先生 詩
昭和廿[にじゅう]三年六月
永井荷風 書
父鴎外森林太郎三十三回忌にあたり弟妹と計りて供養のためこの碑を建つ
昭和三十九年七月九日 嗣 於菟[おと]
団子坂 (千駄木)
鴎外が30年も住んでいた観潮楼は、団子坂の上に建っていました。当時は2階の書斎から東京湾が遥かに見えたので、観潮楼と名づけたと言われています。
藪下の道(千駄木)
観潮楼は団子坂を登り切る途中を左に曲がった藪下の道の方が表門だったようです。今でも藪下の道に入口の跡があります。鴎外はこの道をよく散歩していたとのことで、作品の中にも出てきます。
「藪下の道を歩きながらの対話です。女が、いう。「……でも、又あなたの処へ寄ったのは秘密よ」男が、いう。「あなたはこんな事をいつまでも継続しようと思っているのですか」 女は、とまどう。「そうならそうで好くってよ」 こういう会話体は、教育のある令嬢ふうである。さらに男は、いう。「……あなたが僕の傍に来て、いくら堅くしていたって、僕の目はあなたの体のどんな線をだって見ます。そしてあなたはそれを防ぐことが出来ないのです」 女、「随分だわね」と、下を向く。・・・「一体あなたのいつも言っている清い交際というものですね」 『団子坂』(明治42年)
無縁坂 (湯島)
無縁坂は明治23年頃、鴎外の通勤途中にあり、それが縁で「雁」の舞台にしたと言われています。「雁」の中のヒロインお玉が想いを寄せる岡田青年の散歩道として書かれ、多くの人に知られるようになりました。
「寂しい無縁坂を下って、藍染川のお歯黒のような水が流れこむ不忍の池の北側を廻りこみ、上野の山をぶらつく」 『雁』
根津神社 (根津)
観潮楼のあった藪下の道の片側が、根津神社の裏門になります。
「小泉純一は芝日蔭町の宿屋を出て、東京方眼図を片手に人にうるさく問うて、新橋停留場から上野行の電車に乗った。目まぐろしい須田町の乗換も無事に済んだ。さて本郷三丁目で電車を降りて、追分から高等学校に附いて右に曲がって、根津権現の表坂上にある袖浦館という下宿屋の前に到着したのは、十月二十何日かの午前八時であった」 『青年』
(←)根津神社の境内には、明治39年に鴎外が寄進した戦利砲弾があり、
今では水飲み場として使われていますが、裏に森林太郎の文字が刻まれているのははっきりと読み取れます。